図書館ねこデューイ 町を幸せにしたトラねこの物語

図書館ねこ デューイ  ―町を幸せにしたトラねこの物語 
米国スペンサー図書館にいた図書館ねこ、デューイ君の伝記。著者の女性は、デューイ君がいたスペンサー図書館の元館長にして親代わりでもあった。


デューイ君の描写だけに留まらず、彼がいた図書館や小さな町を取り巻く厳しい社会情勢、そんな中で司書として図書館のために奮闘する著者の姿、そして著者のプライベートで起こった幾つかの困難や苦しみも、平行して描かれている。


おそらく架空の物語であれば、一匹のトラねこが図書館にやってきて、皆に愛されて、ずっと幸せに暮らしました、で終わる。
しかしこの物語は著者の目を通しての現実であるから、たとえば最初に猫を図書館に迎え入れた時にヒステリックな抗議の手紙が届いたり、飼育にかかる費用はどうするのかという点についてや、年老いて衰えたデューイ君に対して時には厳しい目を向けられたり、といった描写もある。息を引き取る最後の描写も。


ただ、そうしたシビアな描写もあるからこそ、デューイ君が図書館と町にもたらしたものや、著者がデューイ君を愛し、守り通した(同時にデューイ君もまた著者を愛し、守った)姿にグッとくるのだと思う。
著者がエピローグで綴っている言葉に、彼女とデューイ君との関係がよくあらわされている。


そしてもちろん(猫好きな)読者の期待に応える数々のデューイ君の写真やその仕草・行動の描写もばっちり収められている。(猫好きの)読者のハートをわしづかみにすること請け合いである。


単なる記録ではなく読み物としても面白く、読み応えのある一冊だった。