聖☆おにいさん / 中村光

ブッダとイエスが下界にバカンスへやってきて、立川のアパートでルームシェアしている、というシュールな設定のコメディ。 言わずと知れた聖人2人だが、この作品ではTシャツにジーパン姿、髪型以外は一見フツーのお兄さんである。 下界にもすっかりなじみ、…

 図書館ねこデューイ 町を幸せにしたトラねこの物語

米国スペンサー図書館にいた図書館ねこ、デューイ君の伝記。著者の女性は、デューイ君がいたスペンサー図書館の元館長にして親代わりでもあった。 デューイ君の描写だけに留まらず、彼がいた図書館や小さな町を取り巻く厳しい社会情勢、そんな中で司書として…

 ダ・ヴィンチ 10月号

表紙のスガシカオ氏と、森見登美彦氏のインタビューに惹かれて購入。 スガシカオ氏は今月発売の新アルバムについてと、村上春樹氏とのエピソードを中心にしたインタビュー。 村上春樹氏がCDを初めて聞いたときのことを『意味がなければスイングはない』で…

 7月 (『心の家路』収録)

ある大学生の恋愛の始まりと終わりと、その後のお話。毎年今の時期になると読み返したくなる。 主人公と彼女が付き合うまでの経緯など、実際にありそうな感じのラブストーリーである。 漫画家を目指す主人公と女優を目指す彼女は、1回生の秋に付き合い始める…

 恋文の技術 (「asta*」隔月連載)

書簡形式で書かれた小説。 主人公守田一郎、その友人や先輩たち、妹、知人の森見登美彦氏、意中の女性…登場人物はやや多いが、彼らはあくまで手紙を通して現れる。 登場人物のキャラクターや人間関係、起こった事件などが徐々に伝わってきて、物語としての文…

 ファミリー・アフェア

好きになれない妹の婚約者と、食事やら挨拶やらで相対するハメになった「僕」、というのがストーリーの中心。独特なジョークや皮肉がやつぎばやに出てくるのが楽しい。 気に入らないとはいえ、「僕」は妹の婚約者に本気で辛辣な態度をとるわけではなく、分か…

 夜は短し歩けよ乙女 / 琴音らんまる

森見登美彦氏の同タイトル小説を漫画化した作品。 小説同様四章に分かれているが、こちらは一章・二章(前後編)が原作の第一章にあたり、三章・四章は原作にないオリジナル・ストーリーとなっている。 時間設定も小説は1冊で春夏秋冬と進むが、こちらは1…

 遠い太鼓

村上氏が1986年から1989年の3年間、日本を離れ、ローマ、アテネ、シシリー、ギリシャなどの海外で暮らしていたときのことを綴った旅行記である。 特に好きな章について。(「」は引用) ティタニア映画館の夜は更けて ギリシャの小島で、島唯一の「…

 プ〜ねこ / 北道正幸

たくさんの猫が登場する、ブラックだったりシュールだったりシニカルだったり可愛かったりする4コマ。 当たり前のように人間の言葉を話すものの、外見上はリアルな猫たちが基本的に無表情でつぶやいたりつっこんだりする台詞が可笑しい。 時事もからめつつ、…

 村上ソングズ / 共著 和田誠

村上春樹氏が思い入れのある曲を取り上げ、訳詩とレビューを記している。 全29曲(内2曲は和田氏選曲・訳詩)、ほぼ1960年代〜1990年代の洋楽である。 私は知らない曲ばかりだったが、読んでいて面白かった。曲を知っていればより面白いと思う。 訳詞も味わ…

 きのう何食べた? / よしながふみ

弁護士の筧史郎が作る料理を中心に、彼の同居の恋人や同僚、両親、依頼人といった人々を含めた人間模様を描くオムニバス作品。 主役たちはゲイカップルだが、ラブシーンもなく淡々として読みやすいと思った。 人間関係の描写はさらりと、そのぶん(?)料理…

 辺境・近境

「旅行は疲れるものであり、疲れない旅行は旅行ではない。」(引用)。 それでも旅を繰り返す村上氏による紀行文を集めた一冊。 目指すはモンゴル高原、瀬戸内海の無人島、ノモンハン、メキシコの町、アメリカ大陸、そして神戸など。 イースト・ハンプトンや…

 おいピータン!

食にまつわる人間模様を描いた、ほんわかした漫画。 読み終わったあとは大切な人と一緒においしいものを食べたくなる。 レギュラーの登場人物に加えて1話限りのゲストもあり、各話の主役は持ち回りのオムニバス形式である。 好きな話が多すぎて書ききれない…

 野性時代 11月号

特集「最愛の一冊と至福の読書空間」がよかった。 タイトル通り数人の作家が、最愛の一冊とお気に入りの読書空間を写真つきで紹介している。 素敵だなと感じたのは、恩田陸氏。 照明の落とされた静かなホテルのバーで、本に目を落とす姿にちょっと憧れた。 …

 時間旋律 / 柳原望

古い町並みが残る椿町では、夕暮れ時に過去の風景(=幽霊)が現れる。 陸上の特待生として町の高校にやってきた東野、彼が恋をした幽霊の少女・伽耶、少女の婚約者、東野に羨望を抱く陸上仲間の由郎…それぞれの思いが交錯するノスタルジックで優しい物語。 …

 夜のくもざる

シュールでナンセンス、独特のユーモアが光る短編集。1冊通して読んで、あまりのシュールさに頭がぐらぐらするのを楽しむも良し、束の間の息抜きや気分転換にいくつか選んで読むのも良しな一冊。特に好きな話を。 タイム・マシーン(あるいは幸運としての渡…

 有頂天家族

京都を舞台にした、狸と天狗と人間が入り乱れての化かしあったり食われたりの一大抗争。そして固く結ばれた狸一族の絆と、家族愛を描く。 老いらくの恋に身をやつした天狗、そのお相手の半天狗の美女、偉大だった父を失った狸四兄弟、ヅカファンで熱い母魂を…

 yom yom 2007年10月号

「ブンガク散歩に出よう」特集に惹かれ購入。 森見登美彦氏の「登美彦氏、京都をやや文学的にさまよう」が特によかった。 喫茶店「進々堂」の片隅にいる森見氏が、かつて読んだ文学作品や作家とゆかりの場所についてあれこれ回想するという内容。 梶井基次郎…

 コーヒータイム / 高橋和枝

淡くて柔らかい色彩のイラストと、穏やかな言葉たち。一息いれたいような時に、ふと手に取る絵本のひとつ。 コーヒーを飲みながら、登場人物がささいなことで今とつながる遠い日の記憶について、ひとつひとつ語る。 「ささいなこと」は、たとえば雨の日のア…

 ひみつの階段 / 紺野キタ

[rakuten:book:11056171:image] [rakuten:book:11110458:image] 女子校の古い校舎や寄宿舎で起こる、不思議な出来事を1話完結で描く。 可愛らしい絵柄と、心温まるストーリー展開がいい。特に好きな話を。 「物語をきかせて」 学校の不思議な現象や逸話を収…

 TVピープル

奇妙な味わいの短編。主人公の「僕」の部屋に侵入してきたTVピープル。彼らはいったい何なのか。得体の知れない不安感を煽るような怖さがある。(以下「」は引用) TVピープルの侵入を境に、「僕」の周囲に対する違和感が増えていき、一緒に暮らしている…

 金髪の草原(文庫『四月怪談』収録)

意識が大学時代に戻ってしまった老人と、彼の家にヘルパーとしてやってきた少女。 少女の片恋のエピソードを挟みつつ、夢と現実が入り混じりながら物語は結末へ向かう。 老人という設定ながら、主人公?日暮里歩の外見は青年である。『夏の夜の獏』同様、意…

ヘヴン

戦争で文明が後退し、荒廃した世界が舞台の近未来SF。元軍人のマットと、彼女が出会った少年ロボット・ルークを中心とした物語。2はルーク誕生秘話。 遠藤作品では異色なほどシリアスかつ重く、考え込んでしまうエピソードや台詞が多い。 「いつまでも暴…

 きみはポラリス

「恋愛」をテーマにした短編集。 幸せカップルのほのぼのした物語もあるにはあるが、恋愛のややこしさを感じる物語も多い。特に好きな話について。 永遠に完成しない二通の手紙&永遠に続く手紙の最初の二文 前者は大学生「寺島」と「岡田」(長い付き合いの…

 月館の殺人(上・下) 

巧妙に伏線が張られ、かつ回収されていて、結末に唐突さはなく読み返しても納得がいく。 ただ、それだけに犯人推理の決め手になる出来事(詳しくは控えるがナイフ絡みの一件である)について、少々無理を感じるのが残念。 個人的にはメインストーリーより細…

 ダ・ヴィンチ

「西原理恵子インタビュー」&「俺たちの森見登美彦大特集」に惹かれ購入。 「西原理恵子インタビュー」は絵本『百万回生きた猫』の魅力を語る、というもの。 長い年月をかけて読み返し、その度に印象が変わっていった思い入れ深い絵本であることがよく伝わ…

 森には真理が落ちている(『美貌の果実』収録)

カメである森の主様につまずき、自分もカメになった少女(雪村さん)。 目の前で見ていた同級生(氷室君)の家に連れられ、次第に二人は親しくなっていく。 親子間の血液型の組み合わせ云々に、生物の授業を思い出した。 氷室君の両親の過去は曖昧だが、色々…

 女子と鉄道 / 酒井順子

全国各地の沿線を乗車しての感想はもちろん、そこで見かけた鉄ちゃんたち、Suica、駅係員の制服のデザイン、女性専用車両、車内犯罪である痴漢についてまで、細やかな考察が楽しめる。 鉄道にはどこかロマンや旅情を感じる。 沿線名や電車の系統(キハXX系と…

 美女と竹林 (『小説宝石』)

竹林伐採に乗り出した森見氏のエッセイ(風フィクション?)。 ブログの文章が好きで、似た感じの当連載も楽しく読んでいたが、今回は特に読みながら吹きかけた。 結構ご本人似の挿絵もあいまって、本上まなみさんへのファンっぷり、特に熱烈な時期の描写に…

a piece of cake / 吉田浩美

ここに収められた12冊のささやかな本たちは、いずれも休憩時間に飲む一杯の紅茶のような印象である。 ほんの少しの時間、文章に目を走らせるだけで、ゆったりとした気持ちを取り戻させてくれる。 フジモトマサル氏の「寄贈本」が特によかった。 猫の利用者た…