時間旋律 / 柳原望

moonshiner2007-11-01

古い町並みが残る椿町では、夕暮れ時に過去の風景(=幽霊)が現れる。
陸上の特待生として町の高校にやってきた東野、彼が恋をした幽霊の少女・伽耶、少女の婚約者、東野に羨望を抱く陸上仲間の由郎…それぞれの思いが交錯するノスタルジックで優しい物語。


別々の時代を生きている少年と少女が時を越えて恋に落ちるという設定はロマンチックである。
この作品ではただロマンチックなだけではない面も描写しつつ、読後感はあくまで温かい。


伽耶と出会った東野の、
「それから話をした 毎日話をした 
 自分の中にこんなに言葉があるなんて思ってもみなかった」
という台詞が良かった。


また東野と由郎の友情も物語のひとつの軸となっていて、由郎が自分にない才能を持つ東野へ抱く複雑な思いも印象的だった。
意外な結末(というか人物関係)にはちょっと驚いた。


「椿館」のモデルの建物にも立ち寄ってみたが、雰囲気があってよかった(画像下)。