夜のくもざる

夜のくもざる (村上朝日堂超短編小説)
シュールでナンセンス、独特のユーモアが光る短編集。1冊通して読んで、あまりのシュールさに頭がぐらぐらするのを楽しむも良し、束の間の息抜きや気分転換にいくつか選んで読むのも良しな一冊。特に好きな話を。

  • タイム・マシーン(あるいは幸運としての渡辺昇2)

主人公が「ほら、タイム・マシーン」とコタツを指して言うところが好き。こういう淡々としていながらなんか変、といった可笑しさはツボである。ちなみに「渡辺昇」、安西水丸氏の本名でもあるらしい。

  • コロッケ

お歳暮として18ぐらいのきれいな女の子がやってくる。つい、自分ならどうするかなと有り得ないことを考えてしまうが、好きな料理を作ってもらう、というのはいいチョイスだなあと思う。

  • ビール

とりわけ笑えた話。電話の向こうのオガミドリさんに吹いた。最後の「ぼくはそういう時は聞こえないふりをして、じっと黙っている。」もジワジワとくる。

  • 夜中の汽笛について、あるいは物語の効用について

どれぐらい私のことが好き?という(厄介な)質問に対して、ロマンのある見事な答え方。いいなとため息をつきたくなる一篇。少女のほうの物語もちょっと聞いてみたい。