村上春樹

 ファミリー・アフェア

好きになれない妹の婚約者と、食事やら挨拶やらで相対するハメになった「僕」、というのがストーリーの中心。独特なジョークや皮肉がやつぎばやに出てくるのが楽しい。 気に入らないとはいえ、「僕」は妹の婚約者に本気で辛辣な態度をとるわけではなく、分か…

 遠い太鼓

村上氏が1986年から1989年の3年間、日本を離れ、ローマ、アテネ、シシリー、ギリシャなどの海外で暮らしていたときのことを綴った旅行記である。 特に好きな章について。(「」は引用) ティタニア映画館の夜は更けて ギリシャの小島で、島唯一の「…

 村上ソングズ / 共著 和田誠

村上春樹氏が思い入れのある曲を取り上げ、訳詩とレビューを記している。 全29曲(内2曲は和田氏選曲・訳詩)、ほぼ1960年代〜1990年代の洋楽である。 私は知らない曲ばかりだったが、読んでいて面白かった。曲を知っていればより面白いと思う。 訳詞も味わ…

 辺境・近境

「旅行は疲れるものであり、疲れない旅行は旅行ではない。」(引用)。 それでも旅を繰り返す村上氏による紀行文を集めた一冊。 目指すはモンゴル高原、瀬戸内海の無人島、ノモンハン、メキシコの町、アメリカ大陸、そして神戸など。 イースト・ハンプトンや…

 夜のくもざる

シュールでナンセンス、独特のユーモアが光る短編集。1冊通して読んで、あまりのシュールさに頭がぐらぐらするのを楽しむも良し、束の間の息抜きや気分転換にいくつか選んで読むのも良しな一冊。特に好きな話を。 タイム・マシーン(あるいは幸運としての渡…

 TVピープル

奇妙な味わいの短編。主人公の「僕」の部屋に侵入してきたTVピープル。彼らはいったい何なのか。得体の知れない不安感を煽るような怖さがある。(以下「」は引用) TVピープルの侵入を境に、「僕」の周囲に対する違和感が増えていき、一緒に暮らしている…

 風の歌を聴け×夏陰

「夏陰」を聞いていて、ふと村上春樹氏の小説「風の歌を聴け」を思い出した。 全く別の作品だけれどBGMに合うように思える。 海に近い街を舞台に、過ぎ行く夏を切なくほろ苦いタッチで描いた「風の歌を聴け」は、夏になると読みたくなる物語である。 また、読…

 村上朝日堂の逆襲

村上春樹氏の2冊目のエッセイ集。 執筆当時の時代を感じる時事・流行的記述もちょこちょこあるが、ほとんどは日々のあれこれや好き嫌い等をのんびりと綴っているので今読んでも楽しい。 印象的だった章について。 小説家の有名度について 村上氏が(当時)街…

 村上朝日堂

村上春樹氏の最初のエッセイ集。 テイストは異なるが、小説と甲乙つけがたいほど好きである。 妙に味があって、肩の力が抜けるほのぼのさがある。 1980年代前半に連載されたそうだが、今読んでも充分面白い。特に好きな話を。 聖バレンタイン・デーの切り干し…

 トニー滝谷 / 監督 市川隼

村上春樹氏の短編小説(『レキシントンの幽霊』所収)の映画化。 原作が好きで見たが良かった。小さく流れる音楽も美しい。 小説も淡々としたお話だけれど、この映画も実に淡々としている。 でも妙に印象に残る作品である。 たとえば時々、俳優がナレーショ…

 海辺のカフカ

家出をした15歳の少年が様々な人々に出会い、小さな図書館に身を寄せ、恋を知り、ある森へも足を踏み入れる。 幾つもの謎(或いは仮説)や、平行して進む星野青年やナカタさんのストーリーなど、引き込まれる面白さがある。 印象的だったのは「佐伯さん」。 …

1月1日付の朝日新聞で、作家村上春樹氏の記事有り。顔写真つきで、メールによる取材らしい。 新作が出るたびに世界中で評が書かれることや、ターニングポイントとなった作品(『ねじまき鳥クロニクル』『アンダーグラウンド』)について、少々語っておられた…

 「そうだ、村上さんに聞いてみよう」

村上春樹氏による、1996年から99年秋頃までの公式サイト『村上朝日堂』(今は休止中)での読者とのメールのやり取りをまとめたもの。 「犯罪を犯すとしたらどんな犯罪か?」 「女の子であり続けるための条件は?」 といった他の人に聞いても面白そうな質問か…