コーヒータイム / 高橋和枝

コーヒータイム (のほほん絵本館)淡くて柔らかい色彩のイラストと、穏やかな言葉たち。一息いれたいような時に、ふと手に取る絵本のひとつ。


コーヒーを飲みながら、登場人物がささいなことで今とつながる遠い日の記憶について、ひとつひとつ語る。


「ささいなこと」は、たとえば雨の日のアスファルトの匂いだったり、石油ストーブの匂いだったり、夕方どこかの家から聞こえてくるピアノの練習曲だったりする。
いずれも懐かしいイメージで、読みながらこちらも子供の頃のことを思い出しそうになる。


そしてただ記憶を振り返るだけではなく、今この時も、コーヒーの香りとともにいつか思い出すかもしれないね、と結ばれる。


とても短いお話なのだけれど、優しいイラストとあいまって味わい深く、ときどき読み返す。
夫婦か恋人らしいふたりが、昼下がりのコーヒータイムにゆっくり語りあっているような、ほのぼのとした雰囲気もいい。なんとなくほっとする絵本である。