お別れにむけて(『Family』収録)

FAMILY
ゆっくりとしたメロディに、ぽつりぽつりと呟く独り言のような歌詞。シンプルで淡々とした曲なのに、やけに切ない印象が残る。


タイトルはこれからの別れを連想させるが、すでに「ぼく」と「君」は別々の世界にいる。
「新しい世界」にいる「君」と、そこから見えるかもわからない「ぼく」。
彼らの距離は近いようで遠い。


そして、
「10月の乾いた空気の中で ぼくらの思い出はとまる 『お別れにむけて…』」
と締めくくられる。
すでに別の道を歩んでいるにしろ、時々は話すこともある「君」に、ひっそりと本当のお別れをする「ぼく」。そんな情景が浮かぶ。
たいした別れもできず離れ離れになった今を、諦めとともに受け入れたうえで。


最後に会った時は意識できなかったのに、その後新しい世界へ踏み出した相手との距離から、本当の別れを感じることがある。
この曲を聴くと、そんな「お別れ」の記憶がふと重なる。