森には真理が落ちている(『美貌の果実』収録)


カメである森の主様につまずき、自分もカメになった少女(雪村さん)。
目の前で見ていた同級生(氷室君)の家に連れられ、次第に二人は親しくなっていく。


親子間の血液型の組み合わせ云々に、生物の授業を思い出した。
氷室君の両親の過去は曖昧だが、色々なことを飲みこんで成立する「家庭」というものの強さを感じる。
「家庭」というより「夫婦」か。
「昔何があったかなんて もはや知る必要はない よって冬の仮説は棄却される」(引用)が深いと思った。


あと、なかなかシビアな環境ながらお暢気な雪村さんが地味に魅力的である。
カメになってもすぐ順応したり、健気というかタフというか。
しかも少女漫画のヒロインなのに、告白されての返答が(カメだからとはいえ)「ほんとかよ」、ちょっと受けつつも共感した。
二人が「好きだよ」「ほんとかよ」と繰り返す場面が一番好きである。そのあとに続くハッピーエンドも、何度読んでもほんわかする。