ニューイヤー(『マダムとミスター』所収)


前向きでタフな未亡人グレース、いつも頑固で真面目な割に「清く正しいだけではつまらないですから」と意外な事を言い切る執事グラハム、恋愛関係になりそうでならない二人の微妙が関係も良い。
本作は、新年を迎える瞬間にグレースが長いお祈りをする理由を描いたシリーズ番外編。


故人と最後にどう別れたかということは、後々尾を引くものだと思う。
グレースの場合は後味のいい別れ方ではなく、それも仕方ない面もあったけれど、母親の死後にその思いやりに意外な形で触れることになる。
現実でもよくある話かもしれないが、やはり切ない話である。
もうどうにもできない、亡き人への後悔はつらい。


こんなに後悔するのにどうして人を許す事は難しいんだろう、というモノローグが印象的だった。
シリーズ番外編だが、独立して読んでも充分味わい深い良作。
1年の終わりの今日に読むと、より切なくも温かい気持ちになれる気がした。