ハチミツとクローバー / 羽海野チカ 

ハチミツとクローバー 1 (クイーンズコミックス)
絵柄の可愛いさと、詩情漂うモノローグが印象的。
全員が片思いという見事な「うまくいかなさ」が読者の古傷を思い出させたり、現在進行形で片思いをしている人の共感を得たりするんだろうなあと思った。
自分は好きだけど相手には思われないという、現実にもよくある構図。
その身に染みる切なさを丹念に描いている。


ただ、それぞれの片思いの切なさはとても伝わってくるのだけれど、なぜその相手を好きになったのかというところから描かれていればもっと感情移入できたかもしれない。
竹本君&森田→はぐちゃんはともかく、山田さん→真山とか真山→リカさんは描かれていない前段を想像する必要を感じた。
と言いつつ後者の人々のほうが、好きなエピソードやモノローグが多いけれど。


結末は意外で、少し疑問に思う部分もあった。
ただ、実らなかった恋にも意味はあったんだという締めは、この物語全体を貫くテーマともいえ、すべての片思い経験者にとって嬉しいような切ないような、ホッとするような温かい読後感である。


また物語世界を楽しませてくれるだけでなく、片思いの時の気持ち、学生時代の不安だったり悩んだりする感じなど、読む人自身の思い出も呼び覚ましてくれる良い作品であると思う。