ムーンライト・シャドウ 

ムーンライト・シャドウ

恋人と死別し、早朝にジョギングする「私」の前に不思議な女性が現れる。
生と死の境界線が夜明け前の青い闇の中で溶けて行く、切なくて美しい物語。


突然大切な人を亡くすということは、誰にとってもきついことだろう。
信じられない気持ちや喪失感や悲しみと対峙して、日常生活もこなしていかなければならない。
だからなんでもいいから何か、その人なりの方法が必要になるのだと思う。
「私」のジョギングのように、恋人の弟が亡くした彼女の服を着るように。


現実ではそうやって時間が過ぎるのを待つ位しかやりようがないけれど、この物語では或る不思議な出来事が起きて、取り残された人たちに再び前を向く気持ちを呼び起こしてくれる。切ないけれど、読後感は良い物語である。