君の為にクリスマスソングを歌おう(『天使ですよ』所収)


遠藤作品の中でもややシリアス(コミカルな場面も少しはあるけれども)。
戦場と言う舞台柄、戦争や神様に関する重い問いかけが幾つもある。
足を失った青年兵士が、子供の頃のクリスマスの思い出を語り、「僕達はいつからそんな幸せだけでは満足できなくなったのかなぁ…」と呟く場面などは印象的である。
いずれも答えは出ない。
ただ神様の存在について聞かれた神父の返しはうまいと思う。


「孤独で悲しい生き物である私達は 誰かの為に せめて愛する人の為に」という誰のものともつかないモノローグが登場人物の姿に重なり、物語は幕を閉じる。
とても印象的で、心が静かになるような余韻の残る終わり方だと思う。
今の時期に読みたい物語である。