太陽の塔 

太陽の塔
研究と称して、毎日元彼女を追ってはレポートを作成する大学生の物語。
思い込みと妄想で暴走しつつ、いつしか恋の終りを受け入れていく過程が笑いと一抹の切なさを誘う。


全体を通じて、古風で大仰な言い回しや現実からズレた主人公、彼に負けず劣らず強烈な個性が光る友人などかなり笑って読める。
ただ失恋直後の主人公が、雪の中で彼女と一緒にいた頃を思うところの描写にはほろりとした。


大学生活の描写も、学生時代特有の雰囲気をよく表しており、出てくる地名が思い出深いせいもあってとても懐かしかった。


また作中、叡山電車が不思議な世界への入り口的な役割も持っているが、実際の列車も喧騒の出町柳から人少ない静かな洛北へと、乗客をゆっくり連れて行く点から近いイメージがあったので、よく合っている気がした。


そして現実から空想へ入り込み、どちらともつかない世界が展開していくところでは、物語を読む楽しさが味わえる。


ある意味クリスマス・ムード漂う作品なので、今の時期に読むと味わい深いかもしれない。