四畳半神話大系

四畳半神話大系
幻の至宝、「薔薇色のキャンパスライフ」を手に入れ損ねた大学生の「私」。
もしもあの時、違う選択をしていれば・・・? 4つの選択と、その先に展開する微妙に異なる物語。


4つの短編作品から成り、それぞれ主人公の入学当初のサークル選択によって異なってくる未来が描かれている。
登場人物およびキーワードはほぼ共通だが、主人公とのなれそめや関係するエピソードが少しずつ異なっている。


たとえば悪友の小津氏、樋口師匠、城ヶ崎先輩、相島先輩、羽貫さん、明石さん、香織さん、もちぐま亀の子束子コロッセオ、『海底二万里』など。
読み進める毎に、この話の中ではこう来たかと楽しめる。


最後の作品は不条理SFのようで、異色の面白さがあった。


しかし結末はいずれも同じで、特に悪友の小津氏がどの物語でも主人公に全力で絡んできて駄目にしちゃうのが可笑しい。まさに運命の黒い糸である。


クール・ビューティな黒髪の乙女、明石さんと主人公の結末も同じでほのぼのできる。


一部同じ文章が繰り返されたりと少々変わった構造だけれども、古風な文体とその独特の可笑しみ、愛すべき主人公と個性の光る脇役陣は健在で、前作に引き続き、笑えて楽しめる作品だった。