夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女
大学の後輩である「黒髪の乙女」に片思いし、日々外堀を埋める「私」。笑いと切なさを読み手にもたらしつつ、優しい結末が心温まる物語。


「黒髪の乙女」が、彼女自身の語りからも伺えるように、実に「いい子だなあ」と思える女の子である。
「私」も、彼女の行く先々で待ち伏せする「ナカメ作戦」など、その熱心で迂遠なアプローチ、闇雲な奮闘ぶりが切なくも可笑しい。
また「須田紀子さん」&「パンツ総番長」の二人もよかった。
片思いの切なさと素敵さを体現しているようで、彼らの再会シーンではちょっと貰い泣きしかけた。


もうひとつ、印象的だったのは先輩(私)の脳内会議での熱弁ぶり。他の「私」たちを黙らせただけのことはある。同じく片思い中の人ならきっと背中を押して貰えるはず。


読んだ後はこちらまで優しくなれるような、物語ならではの良さが味わえる作品だと思う。



あと感想からそれるが、作者の公式ブログもかなり面白い。もっと読んでみたいと思っていたら、「小説宝石」でもエッセイ(風フィクション?)の連載が始まったらしい。(ブログ参照)。そちらも楽しみである。