お迎えです。/ 田中メカ


「お迎え」を行う極楽送迎(GSG)社員、社員にスカウトされた主人公のバイト大学生と、彼らが出会う死者たちをオムニバス形式で描く。
コメディなのだけれど、ちょっと切なくて良いモノローグが幾つも出てくる、あたたかいストーリー。
ゲストの幽霊たちの姿は生前のままで怖さはない。特に好きな話をふたつ。

  • 女教師と男子生徒のお話

幽霊となった教師が、泣きながら生徒を叱るところが良かった。
堅くて隙のない、クールな感じの人が思いがけず見せる可愛さや恋愛感情はいいなと思う。
彼女が死者であることで切なさも際立つのだけれど。
週に1度、図書館で会うという生前の約束もなんとなく良かった。

  • 主人公に片思いをしていた女の子のお話

ふとしたことで主人公を知り、話したことは無いけれど「どんな人なんだろう?」といつしか恋心を抱いた女の子の一生懸命さが可愛い。
主人公も実は彼女を知っていて気になっていたというのはいかにも少女漫画的だけれど、本来なら届かなかった言葉が届くというところが良かった。
あと「きっかけは ささいなこと。」というモノローグに共感した。
顔をあわせるうち、仕草や会話の断片などふとしたことで気になって、いつのまにか好きになる。
そういうのは理屈ではないように思う。後に主人公があの世の彼女に会いに行く話も良かった。