センセイの鞄

センセイの鞄 (文春文庫)
ツキコさんとセンセイが共有するふわふわした時間と、淡く美しい四季の描写が心地よい。
穏やかで少し切ない、大人の恋を描いた一冊。


真面目で温和で礼儀正しく、元教え子にも敬語を使うセンセイがいい。
古き良き時代の教師、といった風情があり、古風で上品な話し方をするのが好きだ(「ようござんす」とか「あいすまないことです」とか、「デートいたしましょう」という誘い文句に至るまで)


ツキコさんとセンセイの恋は、残された時間を考えたり、色々な面で少年と少女の初恋とは随分違う。
でも人を好きになる気持ち自体は、幾ら年齢を重ねてもあまり変わらないものなのかもしれない。
最後が切ないけれど、それも含めて良い作品だと思う。


もともと川上氏の作品はエッセイ(下)が好きなのだけれど、この作品はかなりエッセイのふんわりした雰囲気に近いものがあるように感じた。
また番外編のような続編のような『パレード』(同下)もなかなか面白かった。
此処 彼処 (ここ かしこ)
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パレード