ブラック・ジャック / 手塚治虫

ブラック・ジャック 1 (少年チャンピオン・コミックス)
主人公のブラックジャック(以下BJ)はいかにもな善人でもなく根っからの悪人でもない、その匙加減が絶妙。彼の良きパートナー・ピノコもとても可愛い。BJがピノコに見せる父性的で人間臭い面がまた良いと思う。特に印象的で好きな回を。

  • 「ときには真珠のように」

天才外科医のBJでも老衰で死に至った人間はどうすることもできない現実が描かれる。いまわの本間医師の言葉が重い。この回含め、天才として描かれるBJも時に苦悩し無力感に襲われる。そこがより物語に深みを持たせていると思う。

  • 「ネコと庄造と」

BJの手術で正気に戻った男性が、追い払ってもいつまでもついてくるネコに「おいで洋子」と呼びかける最後がとてもよかった。ほのぼのとしつつも切なくて何か涙腺にくる。この話に限らず、動物がからむ話は切ない話が多いように思う。

  • 「おばあちゃん」

最後の息子の「きっと払いますとも!」とBJの「それを聞きたかった」というやりとりが秀逸。母親にまつわる話も泣かせる話が多い。あとBJ自身も亡き母親に対し強い愛情を持ち、大切に思っているのも良いなと思う。


重いテーマを孕んでいるが、その分読み応えがあり、何度読んでも考えさせられるし飽きない。まさに名作だと思う。