Heaven?

Heaven?―ご苦楽レストラン (3) (ビッグコミックス)
駅・住宅地・オフィス街すべてから遠く、何より理想のサービスから遠い、墓地の中にあるフレンチレストラン「ロワン・ディシー(この世の果て)」が舞台のオムニバス形式のコメディ。


淡々としたストーリーながら笑い所が結構あって面白い。
主人公の伊賀君も感情表現が薄く物静かなキャラクターながら、時々天然ぽくて可笑しい。
おじいさんに弱かったり、カエル(マキロン)に真剣に助けを求めたり。
脇を固めるソムリエの山縣さん、店長、川合君、シェフ、オーナーもそれぞれ個性的で味がある。
店を訪れるお客様も同様だが。特に好きな回について。

  • 無意識の墓参

宴会の場で堅くて融通のきかない伊賀君の前に、さらに偏屈な男性が現れ、桜の木の下で語り合う場面が良い。

「飲みたい気分ではありますけれど。」という台詞も。
また振り返ると誰もいない、という場面転換ではひやりとした感じが良く伝わってくる。
「花見とは無意識の墓参にほかならない」という台詞もあるが、花見は本来ただ飲んで騒ぐだけのものではないのだろう。


今日も綺麗に咲いた桜を目にしたが、確かに現実とそうでない世界の境目を曖昧にさせる雰囲気がある花だと思った。
夜桜の幻想的な美しさには引き込まれるような怖さも感じる。
そんな桜の木の下では、会えるはずのない人にも会えるのかもしれない。