小生物語 

小生物語 (幻冬舎文庫)
乙一氏のHP上の日記を1冊にまとめたもの。
あとがきいわく、架空の語り手である「小生」が綴る虚実入り乱れた内容らしい。
どこまでが事実でどこからが創作か読者には分からないけれど(さすがに創作だろうと思うものもあるが)、境目が曖昧だからこそ面白いのかもしれない。


まるでショート・ショートを読んでいるような、不思議なエピソードもある。
ソファーについてきた青白い少年や、深夜の住宅街でサチという名を呼ぶ女性の声など。


日常的な出来事を綴った日も言い回しが可笑しくて笑えるし、作家ならではのサイン会やファンレターにまつわる日記もあったりして読み応えがある。


あと欄外の脚注も良い具合に本文を引き立てている。初の合コン話が数ページにわたって書いてあったりして、面白かったので全部読んでしまった。
しかしこの合コン、出席者は作家や漫画家ばかりだったんだろうか。


あとがきや著者紹介の文が好きだったこともあって、最後まで楽しんで読めた。
惜しい点があるとすれば、こんな形式の日記はこれ1冊で終了したらしいこと。
本業の小説執筆などで忙しいためらしく仕方ないけれど、ちょっと残念である。