アナ・トレントの鞄
映画『ミツバチのささやき』で、アナ・トレントが持っていた鞄が欲しい。そう思い立って、作者は旅に出る。
本書は、その旅の途中で見つけた不思議なもののカタログである。添えられた文も淡々としているが味わい深い。
特に好きなものを。
- 七つの夜の香り
コルク栓を抜けば「あらゆる、過ぎ去った夜から選ばれた」夜の香りが立ち上るという。
香りが記憶を蘇らせるということはままある。
この夜の香りも、やはり自身の印象に残っている夜をあざやかに蘇らせてくれるのだろうか。
大切な夜たちをありありと思い出させてくれるなら、ちょっと試してみたい。
- 小窓
「小窓の中に私を見つけてくれるのを待っている」が印象的だった。
そういう考え方もあるんだ、というちょっとした驚きを覚え、ロマンを感じた。
窓というものは、自分のいる中から外を眺めるためのものとしか思っていなかったので。
また、あとがきの最後の一文が秀逸。ウイットのきいた綺麗なまとめ方である。