不思議なマリナー(『空の食欲魔人』収録)



気持ちがトゲトゲしたり滅入ったりした時、川原作品を読むとちょっと心穏やかになれる気がする。
色んなことに対して、まあいーか…なんて思えてくる。
のほほんとしたキャラクター、ほのぼのしたストーリー。そこはかとなく漂うユーモア。
でも意外と泣かし所もあったりと、まったくもって自分の好みなので好きな作品も多いのだが、その中から本作を。


お嬢様学校に通う17歳の高校生(綾乃ちゃん)が主人公で、相手役(加納さん)は30歳の海上保安官
一見少女漫画の恋愛モノらしい設定ながら、ともに釣りが趣味の二人は絶好の釣り場で偶然出会い親しくなる。


展開の色気の無さは清々しいほどだが、主人公の兄や姉、クリスマスといったイベントもからみ、ちょっとそれらしい雰囲気も漂い始めたところでハッピーエンド。
はっきりした恋愛感情か不明ながら、お互いに相手を好もしく思っているという感じが好きなので、良かった。
地味で温和で、釣りも魚さばきも上手な加納さんがまたよろしい。
丁寧な話し方、ふんわりした笑顔、まじめで律儀な感じが不思議に魅力的。


しかし川原作品で恋らしきものが描かれる時、少女と年上の男性と言う組み合わせが多いなあと思う。
同時収録の「3月革命」(これも好きなのだが)は義理の姉と弟で逆だけれど、珍しい作品かもしれない。