ゆっくりさよならをとなえる

ゆっくりさよならをとなえる
ゆるゆると流れる日常を、淡白ながら味わいのある筆致で描いたエッセイ。全体に漂う穏やかで静かな雰囲気が心地よい。


冬の夜にすることとして「これまで言ったさよならのなかでいちばんしみじみしたさよなら」を決め、「決まったら心の中でゆっくりさよならをとなえる」、というくだりがある。


作中で一番好きな文章なのだけれど、自分には今までそんな「しみじみとしたさよなら」は無かったことに気付く。
性格か偶然か大抵あっさりしており、時に唐突でもあった。
いつか私も、冬の夜に「しみじみとしたさよなら」を思い、心の中でゆっくりさよならをとなえることが出来るだろうか。