2007-01-01から1年間の記事一覧

 下鴨納涼古本市と秋の古本市

先日、下鴨神社の古本市を訪れた。 行く前に『夜は短し歩けよ乙女』(この古本市が舞台の章があり、描写がまた良い)を読んで気分が盛り上がり、実際に長く連なる出店を見た時はちょっとワクワクした。 糺の森の濃い緑と、古書店の紅白の布のコントラストが…

 Hello, my friend / 松任谷由実

夏の終わりに、過ぎ去った夏の日と友達を反芻しているような歌。しかしメロディや歌詞に耳を澄ましていると「君」が単なる友人ではなく、好きだった人でもあることに気付く。そう思うと、「もう二度と会えなくても 友達と呼ばせて」という歌詞がよけい切ない…

 ダ・ヴィンチ

「西原理恵子インタビュー」&「俺たちの森見登美彦大特集」に惹かれ購入。 「西原理恵子インタビュー」は絵本『百万回生きた猫』の魅力を語る、というもの。 長い年月をかけて読み返し、その度に印象が変わっていった思い入れ深い絵本であることがよく伝わ…

 森には真理が落ちている(『美貌の果実』収録)

カメである森の主様につまずき、自分もカメになった少女(雪村さん)。 目の前で見ていた同級生(氷室君)の家に連れられ、次第に二人は親しくなっていく。 親子間の血液型の組み合わせ云々に、生物の授業を思い出した。 氷室君の両親の過去は曖昧だが、色々…

 「恋は遠い日の花火ではない。」(SUNTORY)

というコピーのCMが少し前にあった。 部下らしいOLの意味深な言動に長塚京三氏演じる上司がちょっとドキドキするという、味のあるCMで好きだった。 でも放映当時は、このコピーの意味というか良さが本当にはわからなかった。 今はちょっとだけ分かるよ…

 Mirror (『深海』収録)

夕暮れの空へギター片手に歌う、「あなた」への「単純明快なラブソング」。 ややダークな『深海』では一番好きな曲でもある。誰かを思う気持ちが素朴に歌われていて心に響く。 「自分を見失う様なときは あなたが誰で何の為に生きてるか その謎が早く解ける…

 女子と鉄道 / 酒井順子

全国各地の沿線を乗車しての感想はもちろん、そこで見かけた鉄ちゃんたち、Suica、駅係員の制服のデザイン、女性専用車両、車内犯罪である痴漢についてまで、細やかな考察が楽しめる。 鉄道にはどこかロマンや旅情を感じる。 沿線名や電車の系統(キハXX系と…

 Go!Go! (『SMILE』収録)

困っている女の子の相談にのっていた「ぼく」の回想からなる曲。 いい感じに女の子との仲が深まったと思っていたら(「ぼく」にとっては)信じられないオチ。自分も守ってあげたいよな人には弱いので、なんだか人事に思えない。可笑しいが切なくもある歌詞で…

 美女と竹林 (『小説宝石』)

竹林伐採に乗り出した森見氏のエッセイ(風フィクション?)。 ブログの文章が好きで、似た感じの当連載も楽しく読んでいたが、今回は特に読みながら吹きかけた。 結構ご本人似の挿絵もあいまって、本上まなみさんへのファンっぷり、特に熱烈な時期の描写に…

 グッド・バイ(『sweet』収録)

旅立つ「君」を空港で見送る歌。 空港までの二人の沈黙、搭乗ゲートの向こう側で一度振り返る「君」の姿、東の空に消える飛行機の翼の残像、これから続く別々の二人の暮らし。 通して聞いていると短編小説を読んでいるようである。 「君」が「ぼく」にとって…

a piece of cake / 吉田浩美

ここに収められた12冊のささやかな本たちは、いずれも休憩時間に飲む一杯の紅茶のような印象である。 ほんの少しの時間、文章に目を走らせるだけで、ゆったりとした気持ちを取り戻させてくれる。 フジモトマサル氏の「寄贈本」が特によかった。 猫の利用者た…

 ゆっくりさよならをとなえる

ゆるゆると流れる日常を、淡白ながら味わいのある筆致で描いたエッセイ。全体に漂う穏やかで静かな雰囲気が心地よい。 冬の夜にすることとして「これまで言ったさよならのなかでいちばんしみじみしたさよなら」を決め、「決まったら心の中でゆっくりさよなら…

 グライド(『呼吸』収録) / リリイ・シュシュ

どこか幻想的で浮遊感のあるメロディと声、切なく物哀しい歌詞が合わさって、聞き手を曲の世界に引き込む一曲。 映画「リリイ・シュシュのすべて」にて「ネットでカリスマ的人気のミュージシャン」という設定であるリリイ・シュシュが歌う。 映画を見た後、…

 女いっぴき猫ふたり

web上での連載をまとめたもの。日記風のエッセイ漫画。 表紙のバクザン先生のような筆文字からも想像できるように、ほど良く力の抜けたゆるゆるなショート・エッセイ集。 読んでて爆笑、というよりくすっと笑える感じ。 入浴中やスパゲッティを茹でている間…

 弁護士のくず

トヨエツ演じる型破りな弁護士(九頭)と、伊藤英明演じる新人弁護士が担当する依頼人・事件が中心のオムニバスドラマ。 楽屋オチや下ネタも多いけれど、見ごたえは充分。 くず先生の3枚目女好き・でもキレ者なキャラクターも良い。 あと卵入りカップヌード…

 真夏の夜のユメ

落ち着いたメロディと、ハスキーな声で繰り出される影のある言葉たち。耳を澄ませていると、なんだか心がしんとする。 夜中にふと目が覚め、暗いベッドの中で寝返りを打っていると内省的な気分になることがある。 窓の外の闇は深く、人も草木も眠りに沈み、…

 フロイト1/2 

ある日小学生の少女(梨生ちゃん)と大学生(弓彦君)がたまたま出会い、不思議な提灯を二人で分け合った結果、同じ夢を見るようになる。 10年後、若き社長になった弓彦君と高校3年の梨生ちゃんが再会して物語は展開していく。 どんなに親しい人でも、眠って…

 黄金の月 

ほろ苦い呟きのような歌詞と、淡々と繰り返されるメロディが心に響く一曲。 ラジオで耳にするうちに気になり、スガシカオ氏にはまるキッカケになった曲でもある。(歌詞はこちら) この曲で歌われているように、たぶん自分も含め大抵の人が、容赦なく過ぎる…

 風の歌を聴け×夏陰

「夏陰」を聞いていて、ふと村上春樹氏の小説「風の歌を聴け」を思い出した。 全く別の作品だけれどBGMに合うように思える。 海に近い街を舞台に、過ぎ行く夏を切なくほろ苦いタッチで描いた「風の歌を聴け」は、夏になると読みたくなる物語である。 また、読…

 村上朝日堂の逆襲

村上春樹氏の2冊目のエッセイ集。 執筆当時の時代を感じる時事・流行的記述もちょこちょこあるが、ほとんどは日々のあれこれや好き嫌い等をのんびりと綴っているので今読んでも楽しい。 印象的だった章について。 小説家の有名度について 村上氏が(当時)街…

 冷たい頬(『フェイクファー』収録)

優しいメロディと少し切ない歌詞が春らしい一曲。 草野マサムネ氏の書く歌詞は、現実的で抽象的、繊細で骨太、プラトニックでエロティック…といった相反する要素が混在している。 純粋と狂気の境目も感じさせ、不思議な作風だが、独特の魅力を感じる。 この…

 光の川(「TIME」、best盤収録)

ヘッドライトの光の川のなかで、束の間「君」を見かける。 でも何を言えるわけでもなく、再び遠ざかっていく。 そんな一瞬のすれ違いを歌った歌。 渋滞の最中に、他の車の助手席にいる「君」とゆっくりすれ違う。 そんな状況でも「見まちがうわけはない」人…

 笑う大天使 

名門お嬢様学校の聖ミカエル学園に通う、清らかで上品な3人の乙女。 ある時偶然に互いの逞しく庶民的な本性を知り、親近感と連帯感を深めていく。 そんな彼女達が活躍する学園コメディ。 番外編になるようだけれど、印象的だったのは、ロレンス先生の友人お…

 不思議なマリナー(『空の食欲魔人』収録)

気持ちがトゲトゲしたり滅入ったりした時、川原作品を読むとちょっと心穏やかになれる気がする。 色んなことに対して、まあいーか…なんて思えてくる。 のほほんとしたキャラクター、ほのぼのしたストーリー。そこはかとなく漂うユーモア。 でも意外と泣かし…

 コッペリア / 加納朋子

[rakuten:book:11879532:image] 人形に恋をした青年の前に、人形そっくりの女が現れる。 自分が本当に求めているのは人形か女か分からないまま、女を追い始める青年。 青年、女、女のパトロン、人形師…何人もの人間の過去や思惑が交錯して物語は進む。 雑誌…

 私の美の世界 / 森茉莉

独特の古風な文体で綴られる、日常のあれこれ。 話題は料理にお菓子、雑貨や服や文学、時事問題まで。 漢字使いなど独特で、美しい日本語だなと思った。 初版1968年と結構古いが、今でもおかしくないような鋭い意見の綴られている章も多く、結構読み応え…

 てぬのほそみち 

「てぬ」とは「手抜き」の意。いかにラクチンに「手作り」を楽しむかがコンセプト(?)のコミック・エッセイ。 本書で作ってみようと取り上げられるのは、お菓子にアクセサリーに洋服に…と色々である。 読むだけでも楽しいけれど、実際に自分も作ってみたい…

 アナ・トレントの鞄

映画『ミツバチのささやき』で、アナ・トレントが持っていた鞄が欲しい。そう思い立って、作者は旅に出る。 本書は、その旅の途中で見つけた不思議なもののカタログである。添えられた文も淡々としているが味わい深い。 特に好きなものを。 七つの夜の香り …

 小生物語 

乙一氏のHP上の日記を1冊にまとめたもの。 あとがきいわく、架空の語り手である「小生」が綴る虚実入り乱れた内容らしい。 どこまでが事実でどこからが創作か読者には分からないけれど(さすがに創作だろうと思うものもあるが)、境目が曖昧だからこそ面白…

 Heaven?

駅・住宅地・オフィス街すべてから遠く、何より理想のサービスから遠い、墓地の中にあるフレンチレストラン「ロワン・ディシー(この世の果て)」が舞台のオムニバス形式のコメディ。 淡々としたストーリーながら笑い所が結構あって面白い。 主人公の伊賀君…